第165章

馬車の中から不意に響いた妙な物音に、護衛たちが思わず身構えかけた。危うく誤解を招くところだったが、サン・ロット八世がすぐさま制して、気まずい騒ぎにはならずに済んだ。

隊列はふたたび静けさを取り戻し、サン・ロット八世もまた呼吸を整える。

ロゲスト家は最近、本気で自分の心臓を止めに来ているのではないか。

「オルドリッチ、本気で言っているのか? そういうことは軽々しく口にするものじゃない」

相手は八級魔法師だ。たった一人で一国を滅ぼしうる、規格外の存在。

公爵は肩をすくめるように言い返した。

「陛下。私がいつ、根拠もなく口を滑らせましたか」

――確かに、ない。

サン・ロット八世はこ...

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